京成杯レース後回顧(展開はどの馬に有利に働いたのか?)

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各馬にストレスの溜まるスローな展開

 お疲れ様でした。本日行われた京成杯のレース後解説をしたいと思います。レース内容としてはかなりストレスの溜まるスローな展開になったので向き不向きが大きく出たように感じました。そんな中で各馬の評価もしていきます。

 スタートで大きく遅れるような馬はいませんでしたがゼノヴァースは両サイドから寄られて少しスピードを付けづらかった感じになって位置取りを悪くしたということはありました。

 ヒュッゲが行く素振りを見せず控える競馬となったのがこのレースのポイントの一つです。この馬に関してはジリ脚しかないので逃げて引っ張るくらいの競馬から後続に脚を使わせた方が良いタイプであることは動画解説でもお伝えした通りなのでこういう控える競馬をしたら後半は不発になるのが自然です。つまり、トップスピードがない馬なので自分で展開を作ってリードを取って粘り込む競馬が良い結果に繋がってきたタイプです。今回も逃げるチャンスはあったと思いますがこういう選択をしたことがこの馬の敗因としては明確です。

 その結果押し出されるようになったのがロールオブサンダーですが、この馬もJ3タイプなのでジリ脚しかないので後続に脚を使わせるような逃げをした方がいい馬です。先手を取らせてもらえたことは良かったんですが極端に後続を引き付けるスローな逃げをしてしまいました。こうなるとトップスピードの足らない馬ですからヒュッゲと同じで後半の伸び脚勝負では分が悪くなりますのでスローで楽な逃げのように見えますがトップスピードのない馬にとってはヨーイドンの展開に対応できないので自然と馬群に沈んでしまいます。

 スカイグルーヴは控えて差す競馬を教えたいはずだと思っていたのでやはりルメールとしても前走のように逃げの手に出ることはありませんでした。折り合いのつく馬なので控えるに徹してましたがあまりにもスローだったので本心としては逃げたかったくらいだと思います。しかし、将来性を考えるとここでは我慢をさせる競馬をしたかったはずなのでこれは想像通りでした。ただ、あまりにも流れが遅くなりすぎたことで上手な加速はしづらくなりました。

 ゼノヴァースはこのスローの流れで馬群の中に入れてしまってはGCタイプですから加速させていくのが難しくなります。しかも馬群の中で揉まれるような形になってしまいましたので、溜めてすぐに加速するような馬ではない事は動画でも解説しましたがゴチャゴチャして動きづらいということは徐々に加速することが難しいので苦しい展開です。


 クリスタルブラックは前半から頭を上げたりして折り合いを欠いていましたが最初から外に持ち出すことを意識した騎乗をしています。前に馬を置いて後方になるのは仕方がないという騎乗で前半から外側を騎手が見ているのが分かると思います。内枠よりも動きやすい枠の方が好ましいタイプではあるので今回の内枠というのは前走同様に条件としては悪かったんですが、今回は展開としてはこの馬にとっては最良の展開になりました。結論から言ってしまうとスローで隊列が詰まったことで後方からでも動きやすくなったのとトップスピードまで上げやすくなったことで前走で見せたような伸び脚を再度引き出すことができたのが勝因です。今回は隊列が短くなったことで後方待機でも先頭までの距離が短かったというのが良かったですが、これが多頭数になって隊列が長くなると脚を余してしまうようなことも出てくるので今後も展開面においては注意が必要です。しかし、いい脚を長く使えるというこの馬のタフな持続力は中山では向きますし、距離はもっと延びても向くタイプだと思います。

 前半から何も行きたがらないようなドスローの展開でしたので当然このように隊列も短くなります。後方にいても先頭までの距離が短くなりますから長くいい脚を使えれば位置取りが悪くても伸び脚でカバーできます。一方でトップスピードの速くない馬は標的にされればいくら脚を溜めても伸びないのでロールオブサンダーやヒュッゲはそのパターンにはまりました。

 ずっとこの隊列でダラダラと流れていったので動きたい馬群の中の馬は進路が無くて動けずにストレスが溜まりましたし、スカイグルーヴに関しても前が引っ張ってくれなかったのでどのタイミングで動いていくべきかというのでやや仕掛けとしても控えめになりました。そもそもATタイプの馬は中山向きではないので早めに抜け出すくらいの競馬ができた方が好ましいです。同じATタイプとしてはヴェロックスが良い例で、皐月賞も早めに動いていけたので2着に我慢できましたが中山だと最後のスピードアップまでの繋ぎが上手に出せないのでここではスカイグルーヴも同じ感じになりました。このATタイプは中山向きではないというのはお話したことがあると思いますがそれをこの馬は能力でここまでカバーしたのでヴェロックスとそれは同じです。展開的にはもう少しペースが流れてくれた方が自然とスピードアップの繋ぎはよくなったと思います。それはさておき1戦1勝の牝馬で二走ボケも出ずに理想通りの競馬と想像通りの中山での対応だったという全て考えられる範囲の結果になったことは収穫でもあり次に繋がります。

 上の画像の後ろの方にクリスタルブラックの白い帽子が見えますがこれだけ先頭を射程圏に入れれる位置にいるので4コーナーの通過順位(成績データでは4角10番手)以上に前との差がないのが分かります。こうなれば新馬戦で見せた時と同じように外に振りやすいですし今の中山の芝は外に出せば伸びていくので抜群の展開になりました。このスローで隊列の短い展開を作ったのがロールオブサンダーであり、それに競りかけなかったヒュッゲであり、今回は我慢をさせることを教える騎乗をしたスカイグルーヴのルメールが作り出した展開です。

 スカイグルーヴは上手に抜け出したと思いますがここはヴェロックスの皐月賞のような感じですね。馬場もしっかり選んで内容としては良かったと思います。それに対してベストの展開になったのがクリスタルブラックです。

 とはいえ、最後のトップスピードに上がってからの伸び脚というのは魅力的です。新馬戦ではJ2にしていましたがGCタイプかJ1タイプという変更があってもいいと思います。この馬に対しては今後は内枠ではなく出来るだけ動きやすい枠がいいと思います。しかし、前半で折り合いを欠いた場面がありましたからあまりにも外過ぎると前に壁が作れなくて消耗してしまうので6枠くらいでいつでも外に出せるような状態がベストになってくると想像されます。それと距離延長はプラスになります。東京コースへの対応力という点ではやや不安を感じますが、東京なら1600mくらいの方が案外向いてくるかもしれないです。

 3着のディアスティマは後半にもしっかり脚を使える馬なのでスカイグルーヴを追いかける競馬をして最後まで伸び脚は使えていましたし4着のビターエンダーは前半の位置取り差がありながらも後半は伸び脚を使えています。理想を言えばもう少し前が引っ張ってくれる展開の方が向いたであろう一頭です。
 ゼノヴァースも同様で前が引っ張ってくれれば馬群も縦長になってバラけるので進路も選びやすくなって徐々に加速する形に持ち込むこともできましたから短いスローの隊列に涙したタイプです。

 これを見る限りはスカイグルーヴは東京コースに戻ることでもっと良さが出てくるでしょうし、控える競馬も覚えさせることができて対応は見せて中山でATタイプが勝てないのは仕方がないというのもありますから逆に言えば能力の高さを見せて一度は抜け出すことができたことを評価できます。この馬は東京ならマイルでもいいと思うのでノビノビ走れる事の方が大事なのでATタイプとして引き続き楽しみな馬です。

 このレースでは特徴的な馬が多くて、その中でスローの短い隊列という特徴的な展開にもなりましたから結果が白黒ハッキリしやすくなりました。逆にいえばヒュッゲなんかも逃げて縦長に持ち込めていたらまた違った結果になったかもしれませんし、ゼノヴァースに関しても先述の通り運び方一つになると思います。一方でクリスタルブラックに関しても縦長の隊列になっていたら前までは届ききれなかったことも考えられるので、今回の展開がこういう結果になったという認識が必要だと思います。それぞれ適した展開で強さを見せれる馬がいるので着順にとらわれずに次回出走時にはどういう展開になるかを想像したうえで加点減点を加えてあげると良いでしょう。

 総じてスローすぎたのでストレスの溜まった馬は多かったと思うレースです。

東海ステークス予習